今回は、株式会社アルテサロンホールディングスを分析しました。アルテサロンHは、美容室をチェーン展開している会社です。子会社である株式会社アッシュ(Ash)、株式会社ニューヨーク・ニューヨーク(NYNY)、株式会社スタイルデザイナー(SD)を通じ、フランチャイズ方式による美容室のチェーン展開をしています。また、高級個室型リラクゼーションサロン事業を行う子会社として、株式会社AMG(AMG)も。美容室業界は、1人当り生産性が低い為、給与面など厳しい業種と言われていますがアルテサロンHはどの様な経営なのでしょうか。
2011年までの5年間を分析しました。
企業力総合評価は、青信号領域下位から改善トレンドです。115.11→110.24→123.27→126.63→128.24と推移しています。下位親指標(営業効率から安全性まで)を確認すると、資産効率を除き、改善トレンドですので、営業効率が伸びて、キャッシュが入り、それで投資が賄え、なお且つ財務体質が改善するという善循環サイクルに入っていることが見て取れます。
営業効率は2008年12月期決算で谷を刻みながらも、V字回復をして改善トレンドです。
グラフにすると顕著ですが、売上高は減収→減収→減収→増収と悪化トレンドですが利益額は総じて増益。利益率も改善トレンドであることが分ります。まるで、ボクシング選手の様な筋肉質の強い体作りをしているように思えませんか。
なぜ、このような数字の動きをするのでしょうか。それは、アルテサロンHの暖簾分け制度を推進する姿勢にあります。
多くの美容師は、将来独立して自分の美容室を経営することを希望する為、主力チェーンであるAsh、NYNYでは、暖簾分け制度により美容室(パートナーシップサロン=PFC店)をチェーン展開しています。これは、美容技術と店舗運営能力に優れた美容師が独立後、結果として競合とならないよう、会社の協力を促す方法と言えます。
また、PFCオーナーにとっての暖簾分け制度のメリットは、単なる退職・独立と比較し、店長時代の従業員、顧客、店舗設備(アルテサロンHが賃貸)をそのまま引き継いで独立出来る点です。その為、従前の安定した業績を維持し、また初期投資等の資金負担を軽減することが可能となります。また独立後も、チェーン展開する当社グループの研修制度の利用、材料等の大量一括購入によるコスト削減等のメリットも享受できます。
暖簾分け制度により直営店がFC店へと転換した場合、あるいは既存のPFCが新たに店舗を出店した場合は、契約時に、PFCからの加盟金収入等が収益として計上されます。また、その後は店舗設備の賃貸、経営指導、材料・商品の販売、PB商品の販売、販売促進支援、教育研修の提供等を行ない、これが売上となります。
アルテサロンHの暖簾分け制度を知った時、すぐに頭に浮かんだのはCoCo壱番屋(カレーショップ)を展開する壱番屋です。壱番屋も、直営店の店長で優秀な成績の者にFCを認め、企業力を善循環に転換しました。同社は直営店よりも加盟店の業績が良いのが特徴です。
通常のFCでは、直営店ほど本部の管理が及ばない為、FC店の業績の方が良くない会社も多いようです。
まとめ
独立心旺盛で、やる気のある人材を敵に回すことなく、自社のグループ内に留め置き、また、独立する側も店長時代に築いたすべてを持って独立出来るというビジネスモデルで成功しています。日本を代表する企業の厳しい状況を見るにつけ、大企業病を克服し、個人のやる気をそのまま引き出す暖簾分け制度はとても有効なモデルではないでしょうか。
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